ビジネス心理事例のご紹介

セールスに「ミルトンモデル」を使った事例

営業でも接客でも、セールスで一番難しいのはクロージングと言われます。そして、「クロージングが苦手」という方は数多くいらっしゃいます。クロージングとは相手に決断を迫る行為で、人間は決断を迫られると心理的に反発する性質を持っているので、売る方買う方双方にとって心の負担が大きいからです。

私もクロージングは得意ではありませんでした。眼鏡を売るとき「決めてください」の一言がなかなか言えず、何度も商機を逃していました。

そんな時に出会ったのが「ミルトンモデル」です。「ミルトンモデル」とは、20世紀最高の催眠療法家として有名なミルトン・エリクソン博士がクライアントに対して使用していた巧みな言葉遣いを分析・体系化したものです。「ミルトンモデル」の特徴は、相手の心の反発をすり抜けるために、相手の無意識に働きかけること。無意識に訴えていく言葉遣いなので、お客さまは決断を迫られても心理的に反発することがありません。

「ミルトンモデル」には、自分の伝えたいことを前提として埋め込む話法や、相手に混乱を引き起こして行動を誘導する話法など、セールスに活かせるいくつものテクニックがあります。その中で私がクロージングの際に使って、もっとも効果的だった「マイ・フレンド・ジョン」というテクニックをご紹介します。

「マイ・フレンド・ジョン」とは第三者話法とも言われるテクニックで、自分の言いたいことを「誰々さんから聞いた話ですが〜」と第三者の言葉で伝えるやり方です。人は誰でもクロージングをされると多かれ少なかれ抵抗を感じます。だからこそクロージングは難しいのですが、「他人に起こったストーリー聞いている時は警戒心が薄れる」という心のクセも持っていますので、「誰々さんから聞いた話ですが〜」と話すと無意識の抵抗を受けることがなく、スムーズにクロージングができるのです。

私自身は「マイ・フレンド・ジョン」テクニック使うことで、眼鏡のクロージング率をそれまでの3倍にあげることができました。

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マネジメントに「エニアグラム」を使った事例

エニアグラムとは古代ギリシャに端を発し、スタンフォード大学で統計学や脳科学と結びついて編まれた性格分析論です。驚くべき正確性を持つことからアップルやコカコーラといった世界的な企業や、日本でもソニーやトヨタなどの大企業がこぞって社内マネジメントに取り入れている知見です。

私も経営者として社員を雇用していますが、エニアグラムを学ぶ前は社員の気持ちがまったく分からず、怒ったり叱ったりしていましたし、それでも思うように動いてくれないことにストレスを感じていました。そんな私の態度に耐え切れず、やめていく社員も少なくありませんでした。

たとえばある店舗の店長は、お店の前を小さな子供が通りかかると「かわいいね」と声をかけ、お正月には手作りのお節でお客さまをお迎えし、音頭を取って蛍狩りやハロウィンパーティを企画し、「売上をあげるにはお客さまの悩みを一生懸命に聞くこと」と言いきる、心根の優しい女性でした。

そんな彼女は「お客さまの気持ち」を一番に考えるあまり、会社の決め事に反する行動をとることがよくありました。具体的には「お渡しは一人にひとつ」と決めたノベルティを、お子さんが二人いるご家族にはふたつ差し上げるような小さなことです。しかしエニアグラムを知らなかった当時の私は会社のルールを守らない彼女に腹を立て、「あげる方とあげない方がいると不平等になるからやめてくれ」と強く怒っていました。そんなことが重なったため、お店とって重要な存在だったにも関わらず、彼女は自ら会社を去ることになったのです…

しかし、エニアグラムを学んだいまは彼女の心の動きがよく分かります。そして私がどのように接すれば良かったかも分かります。なぜならそれらすべてをエニアグラムが教えてくれたからです。

エニアグラムを学び、マネジメントに活用するようになってから離職した社員は一人もいません。それどころか全員が生き甲斐を持って働いてくれるようになりました。売上も上がり、その結果として給料を上げることができ、すべてがいい方向に回っています。

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販売促進に「行動経済学」を使った事例

行動経済学は2002年に米国のダニエル・カーネマン博士がノーベル経済学賞を受賞したことで一躍脚光を集めた学問で、様々な実験によって人の心理的な傾向を分析、把握し、それを理論的に体系化するのを目的に研究されています。

実際、行動経済学を学ぶと「使いたくなる」知見がザクザクと出てくるので、私も広告やネットマーケティング、店頭での販売促進に多いに活用しています。たとえば「選択回避の法則」。人は「比較して決めたい」と望む一方、「複雑な比較は避けたい」とも望む、ある意味、相反した心の特性を持っているという法則です。

私の店は店頭に「今月のオススメ」というコーナーを設け、そこにお客さまの興味を惹く商品を陳列することで販売につなげる、シンプルな販売促進を実施しています。「選択回避の法則」を知らなかった頃の私は、そのオススメコーナーにできるだけたくさんの眼鏡を並べていました。お客さまの好みは様々なので、たくさん並べた方が多くのお客さまの興味を惹くだろうと考えていたからです。

しかし、オススメコーナーで接客をすると迷ってしまうお客さまも少なくなく、最終的に「どれがいいか分からなくなったので、ちょっと考えてまたきます」と、販売のチャンスを逃してしまうことがよくありました。

そんなときに知ったのが「選択回避の法則」です。多くの選択肢があると、自分にとって最高の選択をしたいお客さまにとっては、「選ばなかった選択肢」について悩んでしまうことがあり、それが満足度を低下させてしまうことにつながる、と説かれていました。

まさかたくさんお薦めがお客さまの満足度を下げるとは思わなかったので半信半疑でしたが、オススメコーナーに置く眼鏡を3本に絞り、空いたスペースにお薦めの理由を書いたPOPを設置しました。すると驚くべきことに、オススメコーナーで足を止めていただく方の数が倍になり、決めていただく方の確率も倍になったのです。それからは積極的に、行動経済学の知見を販売促進に取り入れています。

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商品開発に「マズローの欲求五段階説」を使った事例

私が初めてオリジナルの眼鏡を発売したのは1997年。経営する眼鏡店が名古屋パルコに「チャレンジショップ」として入店が決まったのがきっかけです。意気込んで、世界のどこでも見たこともないオリジナルフレームを製作しました。個性的で奇抜なデザインのオリジナルは、多くの雑誌から取材を受け、全国誌の表紙を飾るほど注目もされました。ところが、まったく売れなかったのです。実売ゼロのモデルがあったほど、本当にまったく売れませんでした。

私には理由が分かりませんでした。「注目を集め、話題にもなっているのになぜ売れないんだ?」と悩み、ラインナップの少なさが原因だと思い、新しいモデルを追加しました。その新しいモデルもまったく売れず、不良在庫を増やしただけでした。

そんなときに出会ったのが「マズローの欲求五段階説」です。心理学者のアブラハム・マズロー氏が、人間が本質的に求めている欲求を五段階であわらした説で、基本的には低階層の欲求が満たされると一階層上の欲求を欲するようになる、というものです。五段階の階層は、上から順番に次の階層に分けられます。

  • 自己実現欲求 (あるべき自分になりたい)
  • 承認欲求 (褒められたい・認められたい)
  • 社会的欲求 (集団に属したい、仲間が欲しい)
  • 安全欲求 (安全・安心な暮らしがしたい)
  • 生理的欲求 (食べたい・寝たい)

眼鏡は本来的には「モノをハッキリ見たい(見えないと危ない)」という「安全欲求」を満たす商品です。しかし私は「承認欲求」を満たす商品と捉え「個性的なデザイン」で開発していました。「安全欲求」を満たす眼鏡は価格の闘いになると考えていたからであり、ここまでの私の考えは間違っていませんでした。

私の最大の間違いは「私の承認欲求」を満たす商品を作ってしまったこと。お客さまが欲しいのは「自分の承認欲求」を満たす商品です。「マズローの欲求五段階説」を通してそのことをハッキリと自覚した私は、以降「お客さまの承認欲求」を満たすことに集中して商品開発をし、次々にヒット商品を開発できるようになりました。

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資金調達に「エニアプロファイル」を使った事例

私の経営する眼鏡ブランドの製産は、自社工場だけでなく、福井県鯖江市の工場や海外の工場にも依頼をしています。海外の工場の場合、現地での生産が完了した時点で全額を送金する契約がほとんど。つまり先にお金が必要なわけです。

ある年、非常に大きなロットで製産する仕事の話が舞い込んできました。完全買い取りの契約だったので在庫になるリスクはありませんでしたが、困ったのは資金です。その契約を満たす製産ができる工場は海外にしかなく、私の手元に必要な資金がなかったからです。

私は資金調達のため取引銀行を訪ねました。融資担当の方に確実に返済できることをしっかりと説明しましたが融資を断れてしまいました。売り先が決まっている取引ですから、私が考える限り安全な融資です。それでも断られて、結局、その仕事を受けることができませんでした…

時は流れて2016年、私は「エニアプロファイル」という性格分析論に基づくコミュニケーション術の本を上梓しました。同じ年の暮れに、以前と同じように非常に大きなロットで製産する仕事の話が舞い込んできて、同じように資金調達のため取引銀行を訪ねました。

そのときの私は、前回の交渉が上手くいかなかった原因を分かっていました。融資担当者が無意識下に持っている「恐れ」を理解せず、逆にないがしろにして強引に話を進めてしまったからです。

同じ過ちを繰り返さないよう私は慎重に融資担当者の性格タイプをプロファイルし、その人が無意識下に持つ「恐れ」を理解し、その「恐れ」に寄り添うように交渉を進めました。

結果、当初私が目論んでいたよりはるかにいい条件で資金を借りることができ、大きなロットで製産をすることができ、少なくない利益をあげることができました。

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Posted by vec-inc